車検といえば、
「ワイパー、エアクリーナ、ブレーキフルード、ミッションオイル…」
等を交換するイメージが強いと思いますが、あれはあくまでも12ヶ月点検。
ある意味車検とは全く関係ありません。
あくまでも車検がきっかけで入庫したので、このタイミングで全て交換しておきましょう
というニュアンスですね。
では本当に車検で確認される事って何なのでしょうか?
これを知っていなければ、車検に必要だからと思って色々交換しておいた物が
実は全く無関係だった事に気がつきませんよね(汗)
逆に言えば、これを知らずに車検を通すというのは変な話しですよね。
という事で、まずは車検で確認する事をよ〜く知っておきましょう。
今回は陸運事務所に車を持って行った時を想定してお話ししますね。
1.車検証との整合
まずは持ち込んだ車両と車検証に記載されている「エンジン型式」と「車体番号」が
一致しているかを確認されます。
車検証は車の身分証明書とも言える書類ですから、少しでもズレがあると色々と問題
が起こり大変です。
2.最低地上高の確認
普通に乗っている車であれば間違いなく大丈夫ですが、少し車高を下げていたり
マフラーを交換している車で「低いなぁ」と感じさせる車は確認されます。
法定最低地上高は「9センチ」ですので、9センチの大きさで作られているハンマー
を車の下に入れ、干渉しないか確認します。
3.灯火類の確認
車幅灯(ポジションランプ)、前照灯(ヘッドライト)、方向指示器(ウインカー)、
制動灯(ブレーキランプ)、後退灯(バックランプ)、警音器(ホーン)について
それぞれ点灯の確認と定められた色の確認、明るさや音の大きさを確認します。
良く見かける車幅灯の色を青などに交換している人は、白に交換しておく必要がありますね。
4.エンジンルームの確認
エンジンルームを覗いて異常な音がしていないか確認します。もちろん回転部に配線
などが巻き込まれていないかなども確認しますが、巻き込まれている時点で正常に
動かない部位があるはずですのであまり意味は無いでしょう。
音で確認しても、原因を特定できる訳ではありませんので
「後で整備工場に持って行って確認してもらってね」
と言われて通過できるのがパターンだと思います。
もちろんブレーキフルードやエンジンオイルの液漏れなどがあると即NGとなりますのでご注意を。
5.タイヤの確認
タイヤの最低残り溝は法定で「1.6ミリ」と決まっておりますので、パッと見で残り溝があるか確認します。
またその際にホイールナットの締まり具合をハンマーでコンコンと叩いて確認します。
この時タイヤが車体からはみ出していないかも確認しますので、車高を下げていて
タイヤが車からはみ出している人は要注意です。
また、通常は付いていない突起物や大きなバンパー(エアロ)を付けている場合は
車体の寸法が車検証の記載事項と異なっているとみなされてNGとなる場合があります。
6.スピードメーターの確認
車のスピードメーターで時速40kmの時、実際の速度が何kmなのかを測定します。
法定では「プラス15%、マイナス10%」と決められています。
ここでのプラスというのは、実際に出ている時速より多めにスピードメーターで表示
されているという事です。ある意味安全なのです。
本当は35kmしか出てないのにスピードメーターでは40kmと指している。
これって安全ですよね!?
基本的にスピードメーターはプラス表示になるように作られていますので、メーター
で100kmを指していたとしても実際の速度は90km程度。
だからスピード違反で捕まった時の速度はメーターが指していた速度より少ない速度
を通知されるのです。
逆にマイナスだと非常に危険ですね。
メーターで40kmと指しているのに実際は50kmだったら…。
スピード違反になる可能性も大ですし、何より事故の可能性が大幅に上がります。
スピードメーターに関しては基本的に修理できません。
もし誤差が大きくてNGとなれば、スピードメーターを交換するかタイヤの外径を変更
するかのどちらかを選択する事になります。
7.ブレーキテスト
車の重さに対して、決められたブレーキ力(制動力)があるかを確認します。
前輪と後輪はもちろんですが、サイドブレーキも検査されます。
パッドの残量に関係なく制動力は上がりますが、ブレーキフルードにエア(空気)が
噛んでいたりブレーキディスクに油分が付着しているとNGとなる事があります。
サイドブレーキに関してはワイヤーの張り具合で大きく変化します。
ブレーキパッドの量が異常に減っていなければ、通常は何もしなくても合格します。
ある程度減っていても1.6mm以下で鳴り始める異常なキーキー音さえ無ければ
合格はしますが、2mm以下であれば交換したほうが無難でしょう。
ちなみにブレーキパッドの残量確認であれば工賃はほとんどかかりません。
8.光軸
車の高さ、幅に対してヘッドライト(ハイビーム)の向きが正しい方向を向いている
かを確認します。
日々の運転で色々な道路を走っていますが、その凸凹の振動で徐々にヘッドライトの向き
が変わってくるものです。
全然動かない場合もあるのですが、どうしても調整が必要となる場合があります。
光軸の調整自体は非常に簡単ですので、工賃も安いです。
9.サイドスリップの確認
ハンドルが真っ直ぐの時の車のタイヤは、パッと見ただけだと当然のように真っ直ぐ
に向いていますよね!?
でもほんの数ミリ単位で測定すると、実は真っ直ぐでない事がほとんどです。
基本的には色々な車の挙動を考慮して計算された分、タイヤの向き(トー)を真っ直ぐ
ではないように設定・調整されています。(トー調整と言います)
その設定された「狙い値」のままでいてくれるとありがたいのですが、車の足廻り
には非常に多くのゴム部品だとかスプリングを使用していますので、どうしても
年数や走行距離が重なる事でほんの少しだけ劣化・変形していきます。
それらの部品の劣化により、トーが少しずつ変化していく事になります。
トーが変化するとタイヤの減り方が非常に大きくなったり、運転に支障を与える場合もあります。
ただ、目で見てすぐにわかるほどトーが変化していると簡単に気づけるのですが、
実際はそんなに極端な変化はしません。
ですので、専用の「サイドスリップテスター」という物を使う事で測定します。
何を測定するのかというと、「タイヤの横ズレ量」と言われる数値を測定しています。
これはタイヤが真っ直ぐをゼロとした時にどれくらいズレているかを見ます。
お堅い言葉で言えば、「かじ取り車輪の整列状態の確認」と言えます。
調整自体は非常に簡単なのですが、サイドスリップテスターが無ければ正確な数値
を確認できませんので、作業はお店に頼むのが基本でしょう。
※地道な作業で、テスターを使わずに測定する事は一応可能です。
陸運事務所の近場に多数ある「テスター屋」さんで調整してもらうか、普段お世話に
なっているディーラーで行ってもらうのが無難でしょう。
ただ、車高を落としていたりサスペンションを交換したりしていなければ極端に変化
する物ではありませんので、そのまま車検場に持ち込んでもほぼ合格します。
ただここで気をつけたいのは、駐車場の縁石などに強くぶつけたり大きな段差を
それなりのスピードで通過する事でサイドスリップが変化する事もありますのでご注意を!
10.排ガス検査
これは年々厳しくなっている検査ですね。
ただ、何年に製造された車かによって基準が変化しますので、極端に古い車を乗って
いない限りは特に心配する必要がありません。
何もしていないのに排ガス検査に引っかかるという事は、エンジンに問題があって
不完全燃焼を起こしている可能性がありますね。
他にも、排ガスを化学反応できれいにする役割がある「触媒(しょくばい)」という
部品が正常に働いていないのも考えられます。
可能性を述べていけばキリがありませんが、普通は気にしなくても合格する検査です。
一つだけ注意点があるとすれば、それは「暖機」をしっかりと行ってから検査を受けた
方が合格しやすいという点でしょう。
冷機時はガソリンが燃えにくく、さらにいつも以上の量のガソリンを使用していますので、
排ガスの成分としてはあまりよろしくありません。
ですので、排ガス検査を行う前には十分な暖機をしてから測定しましょう。
11.足廻り検査
この検査が非常に判断が難しく、検査員によって合格不合格が変化する微妙な検査です。
基本的には「正常にサスペンション各部が機能しているか」を見ているのですが、それ
だけではなく「オイル漏れ」「ブーツ破れ」などが無いかも確認されます。
基本のサスペンションの機能は、車の足廻りの一部にレンチを掛けて車を揺さぶり、
変な異音がないかと固着している部分が無いかを見ています。
国の車検場では、自分が車に乗った状態で車を揺さぶられますので少し楽しいです(笑)
その後、各ボルトが緩んでいないかを検査ハンマーでコンコン叩いて確認されます。
その間に、エンジンを下から見てオイル漏れが無いかを見たり、サスペンションを保護
するために必要なブーツが破れてグリス(潤滑油)が漏れていないかを見ます。
オイル漏れは車検前にきれいに洗い流しておけばはっきり言って気づかれません。
もし洗ってすぐに漏れ始めるほどの重症であれば、あっという間にエンジン内のオイル
が無くなってエンジン焼き付き。もう車検どうこう以前の問題ですね…。
ブーツ破れに関しては、確かにきれいに洗い流す事でごまかす事は可能です。
ただ、ブーツが破れているとブーツ内に異物や水分が入り込み、最終的には正常な動き
ができないサスペンションとなってしまいます。
こうなるとサスペンションを交換する事になり、非常に大きな出費となります。
ブーツの交換だけなら非常に安いのに、そこをケチる事で大きな痛手…。
車検はその場しのぎの対処法なんていくらでもあるのですが、駄目な所はしっかりと
対処してから受けましょうね。
参考までに具体的な写真が手に入りましたので、
「へ〜。こんな風になるんだぁ (* ̄- ̄)ふ〜ん」
となる人も多いと思いますので、参考までにご覧下さいミ
【ヘッドカバーパッキン部よりオイル漏れ】
ヘッドカバーパッキンは漏れやすい!
車の中でも、ヘッドカバーパッキンという場所は年数が経つと高確率でオイル漏れをする場所です。
写真の状態はまだまだ良い方で、本当にオイルがポタポタ垂れる状態の物もよく見かけます。
一目で漏れている事が確認できますので、車検で引っかかる可能性があります。
【タイロッドエンドブーツ破れ】
タイロッドエンドブーツは破れやすい!
数多くあるブーツの中でも、タイロッドエンド(ハンドルを切った時に連動して動き、タイヤを最終的に動かしている部分)
にあるブーツが一番破れます。
ハンドルを切るたびに伸び縮みしていますので、ダメージを受けやすい部分なんですね。
写真は少し暗いのでわかりにくいかもしれませんが、見事にグリスが漏れています。
このまま無視して走行を続けると、中に入っているグリスが無くなり異物や水分が入り込みます。
そうなるとハンドルを切ったときに異音がしたり、ゴツゴツした手ごたえが始まります。
そうなるとタイロッドエンド本体を交換する必要がありますので、ブーツ破れは早めに対処しましょう!
車によって非常に様々な不具合を抱えています。ただ、それらの不具合をほんの1分ほどしか見ない
検査員ではとても見つける事はできません。
あくまでも「車検に合格させる!」という目的であれば、コイン洗車場などにある
非常に強力な噴射機(スチーム)で車の裏側やエンジンルームを洗い流しておけば、
ほぼ合格できます。
ただ、これをしても後で痛い目にあう可能性がありますので忘れないでくださいね。
最近はユーザー車検が流行っていますが、全く車を点検しないで持ち込んでも合格して
しまう現状もあります。
ただ、「定期点検」は最低でも2年に一度はやっておきましょうね。
それさえしっかりやっておけば、車検場に自分で持ち込んで「代行手数料を節約」する事は
全然問題がない事です。
ブーツが破れていたりオイルが漏れていれば、定期点検でしっかりと見つけて修理して
くれますので、安心して車を乗り続ける事ができます。
要はこういう事です。
・定期点検(12ヶ月点検)
・車検整備(光軸やサイドスリップなど)
・車検代行手数料
・重量税
の4項目で構成されている車検時の費用ですが、車を自分で整備できない方は
●定期点検はお店でやってもらう(本来は毎年ですが、無理なら最低2年に一度)
●車検整備(定期点検のついでにお店でやってもらう)
※何もしなくても合格する事が多いですので、とりあえず持ち込んで見るのもあり
●代行手数料(自分で持ち込む事で節約できるので、思い切って自分で行く)
●重量税(これは何が何でも支払う必要があります)
これが一番安全な節約法だと思います。
代行手数料は思った以上に大きな金額を支払います。陸運事務所でやる事は非常に簡単
な事ばかりですので、知識見聞を広めるという意味でも是非ご自身で持ち込んでみてください。
持ち込んだ時の流れなども、今後お話ししていく予定です。
車を自分で点検整備できる方なら、私がどうこう言うまでも無くご自身で持ち込まれて
いるでしょう。時間の都合で自分で持ち込まない方もいらっしゃるでしょうが…。
現状を見ると、初回車検(3年目)は車検整備以外は何もせずに車検に通ります。
もちろん定期点検でも本当に交換が必要な部分はないはずです。
よっぽど激しい運転か保管状況が悪ければ話しは別ですが…。
ですので、初回車検時に限っては定期点検無しで車検を受けても大丈夫だと思います。
つまり、ユーザー車検を経験しやすい車検のタイミングなんですね。
車検整備に関しては、通常のお店ではなく車検場の近くにたくさんの「テスター屋」
がありますので、そこで点検調整してくれます。
確か2000〜4000円ほどですので、本番でやる事と同じ事を事前に確認すると
いう意味でも持ち込んでおいた方がよいでしょう。
今回は少し難しい表現が続きましたね (;^_^A アセアセ
でも今までグレーだった車検が少しずつ見えてきたのではないでしょうか?
皆さんに一番知っておいてほしいのは、車検だからといって色々な部品を交換する必要は
無いという事です。
実際に車検で関係する部分というのは「見た目」ですぐにわかる「漏れ」「破れ」です。
それ以外は交換が必要になってから交換するのが正しい整備ですよ♪
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