※タイミングベルトやバルブタイミングに関する詳しい説明(整備士3級〜2級レベル)をご希望の方は別の
サイトで私が執筆したページがございますのでそちらをご覧下さい。
掲載サイト:アイティメディア(モノイスト)
⇒ タイミングベルト、まだ使っているの?
⇒ 「バルブタイミング=0°」とはどういう状態か?
「4ストローク(サイクル)エンジン」
の大まかな内容は「4ストローク(サイクル)エンジンとは? その1」でお話ししましたね。
あまり覚えていらっしゃらない方のため、ほんの少し復習しましょう。
まず、4ストロークというのは「4行程」という意味です。
行程というのはピストンの運動の事で、
「ピストンが4回動くと1回爆発する」
のが4ストロークエンジンだとお話ししました。
注意点として、
ピストンが4回動く=ピストンが4往復
という事ではありませんのでご注意くださいね。
往復という表現を使うならば、4行程は2往復です。
さて本題に入ります。
エンジンを停止するまでピストンは4行程を延々と繰り返します。
その4行程をこのページでは詳しくお話ししていくことにしますね。
まず4行程をお話しする前に、エンジン内部にある重要な部品をご説明しておきます。
少し難しく感じるかもしれませんが、後に出てくるイラストを見ればすぐに理解できますので
少し我慢してくださいね♪
ピストンの上部には、「バルブ」と呼ばれる弁がついています。
排気バルブです。
バルブには2種類あり、
「吸気行程」で開く「吸気バルブ(インレットバルブ)」
「排気行程」で開く「排気バルブ(エキゾーストバルブ)」
の二つがあります。
これらのバルブは、卵型をした「カム」という部品に「ロッカーアーム」と
「バルブスプリング」という部品を挟んで間接的に押されています。
カムシャフト
ロッカーアーム(カムシャフトは取り外し済み)
バルブスプリング(ロッカーアームは取り外し済み)
このカムが回る事でロッカーアームを押し上げ、ロッカーアームがバルブスプリング
を押し下げることでバルブが押し出され、開いたり閉じたりするのです。
※エンジンによってレイアウトや構成部品が若干異なりますのでご注意くださいね。
この「カム」がついているシャフト(棒)を「カムシャフト」と言います。
以上を踏まえて、4行程の説明に入りますね!
各行程用のイラストを用意していますので、参照しながらお読みくださいね!
1.吸気行程
吸気行程の作動イメージです。
まずは吸気行程からお話ししていきます。
吸気行程での関連部品の位置関係を見てみましょう。
吸気側(左)のカム山はロッカーアームを押しているので吸気バルブが開きます。
逆に排気側のカム山は低い状態なので、ロッカーアームを押しません。
排気側をよ〜く見たら、ロッカーアームとバルブスプリングとの間に隙間がありますよね!
この状態で、ピストンが一番上の位置(上死点と言います)から一番下の位置(下死点)へ動くので
注射器で空気を吸い込む原理で混合気を吸い込みます。
※混合気とは、空気とガソリンが混ざり合った物です。
混合気は吸気バルブ(イラスト左側)が開いた部分から入り込みます。(インマニから)
吸気側と排気側のカム山の位置とピストンの動きとが決められたタイミングで一致するから
こそ可能な行程と言えます。
このタイミングを決めているのが皆様ご存知の
「タイミングベルト」
なんですね。
タイミングベルトとは、カムシャフト(バルブ)とクランクシャフト(ピストン)とを結ぶベルトの事です。
タイミングベルトが切れると、バルブが開くタイミング(カムの位置)とピストンの位置(クランクシャフトの位置)とがずれ、
最悪の場合ピストンとバルブが衝突してしまう事になります。
だからタイミングベルトは重要なのです。
ちなみに吸気行程で空気が吸い込まれるタイミングでインジェクタという燃料噴射装置から
ガソリンが噴射されて混合気が作られています。
この噴射のタイミングにも様々な工夫がされており、大きく性能が変わってきます。
吸気行程が終わるにつれて、カム山も低くなっていきます。
そして最終的に吸気側のバルブは閉じ、次の行程である圧縮行程へと移ります。
2.圧縮行程
吸気行程で吸入した混合気を、ピストンが上に上がる事により圧縮します。
圧縮するのですから、当然バルブは両方とも閉じています。
イラストを見ていただくとお分かりになると思いますが、この時の両側のカム位置はカム山が低い状態
なので、ロッカーアームを押せませんね。
両側のロッカーアームとバルブスプリングとの間に隙間があるのがお分かりになると思います。
余談になりますが、この隙間を
「バルブクリアランス」
と言います。
この隙間の大きさもエンジンの性能に関係してくるのですが、それは少しマニアック
なのでここでは割愛しておきますね(汗)
吸気行程が終わり、吸気側・排気側の両方のバルブはしっかりと閉じています。
そしてピストンは上昇を始めます。
もちろんエンジン内には混合気がありますから、必然的に混合気を圧縮する事になりますね。
ピストンが上死点近くまで上昇すると、スパークプラグは圧縮された混合気に火花を飛ばします。
完全に上死点になる前に点火するのです。
その理由は、ピストンは非常に高速で上下運動している事に起因します。
混合気に火花を飛ばしても、爆発するまでにほんの少しタイムラグがありますよね。
そのほんの少しのタイムラグをあらかじめ予測して早めに点火しているのです。(点火時期の調整)
点火されると、次の行程である燃焼行程へと移ります。
3.燃焼行程
圧縮行程で圧縮した混合気にスパークプラグが点火し、混合気は勢いよく爆発します。
点火して爆発が始まると、ピストンは上死点をすぎて大きな爆発力と共に下降を始めます。
爆発力が伴いますので、加速しながらの下降となります。
ピストンが外的な力で加速できるのはこの行程のみとなります。
他の3行程は惰性で動いている事になるんですね。
この爆発力の増減(頻度)が加速の力となります。
つまり、爆発力(加速)を高めたければ燃料が多い混合気を頻繁に送り込めば良いのです。
ピストンが下死点に近づくと、排気バルブが少し開き始めます。
次の行程である排気行程へスムーズに進むためですね。
4.排気行程
燃焼行程で爆発した混合気は排気ガスとなり、排気バルブの開いた部分からマフラーへと排出されます。
ピストンが上昇を始めると、当然排気バルブが開いています。(カムの位置)
吸気行程の逆の考え方で、注射器の原理で燃焼ガス(排ガス)が押し出されます。
さらに、排気行程の場合は爆発による圧力も加わっています。
つまりピストンで押し出す力だけでなく、自らの圧力で出口である排気バルブへと
突き進んでいくわけです。
この点を考慮し、実は吸気バルブと排気バルブには大きさの違いがあります。
ピストンの力で吸い込まなければいけない吸気側のバルブは径が大きく作られており、
自らの高圧な力で出て行く排気側のバルブは小さく作られています。
一応イラストにもその違いを反映しましたが、私が見る限りあまり違いがわかりませんね〜(涙)
ピストンが上死点にたどり着く頃には吸気バルブも若干開き始め、少しの間だけ量バルブが開く
というタイミングが発生します。(イラストには反映していません)
そうなんです。
排気行程と吸気行程の境目には、吸気側と排気側の両方のバルブが開く瞬間があるんです。
このタイミングを「オーバーラップ」と言います。
このオーバーラップは、排気⇒吸気をスムーズにする為に用意されています。
この点を詳しくお話ししても混乱してしまうだけですので割愛しますが、要は
「人間が考えれる範囲のあらゆる技術、知識を盛り込んでいる」
のがエンジン(自動車)です。
以上で4行程は終了で、4ストローク(サイクル)エンジンはこれらの4行程を延々繰り返します。
ちなみに私が今回お話しした内容は、私が専門学校に入って1週間以内に勉強する、
自動車工学の中でも一番の初歩的な部分です。
ここから始まる自動車工学。
奥がとんでもなく深そうに思えますか(笑)
とんでもなく深いですよ(汗)
そんな深い世界に皆様をお連れするつもりはありませんが…。
※奥が深いバルブタイミングに関する詳しい説明(整備士3級〜2級レベル)をご希望の方は別の
サイトで私が執筆したページがございますのでそちらをご覧下さい。
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⇒ 「バルブタイミング=0°」とはどういう状態か?
ともあれ、今や99.9%の人が乗っている4ストロークエンジンの仕組みが何となく
お分かりになりましたでしょうか?
今回のお話しが直接皆様のお役に立つ事があるかは分かりませんが、少なからず交換
するであろう「タイミングベルト」などの部品と関係する部分です。
頭の隅っこの方にでも留めておいていただけると非常に光栄です♪
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おまけですが、私が延々とお話した4ストロークエンジンの実際の動きを動画で見事に
表現しているページがあります。
私もはじめて見た時は感動を覚えました。
実際の動きを見る事で尚いっそうの理解が深まると思いますので、是非ともご覧ください。
少し解説しておきますと、このエンジンにはタイミングベルトではなく「タイミングチェーン」と
よばれる部品が採用されています。もちろん基本的な目的は同じです。
また、「ロッカーアーム」が無く、カムが直接的にバルブを押すタイプです。
⇒ 4ストロークエンジンの実際の動き(別サイトが新しいウインドウで開きます)
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