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ホーム電気装置基礎編

ヒーターの仕組み
気温が低い時に車に乗り込み、すぐにヒーターを付けても冷たい風しか出てこないという辛い経験をした方は多数いらっしゃると思いますが、実はこの事象からヒーターの構造が読み取れます。

前回までにお話ししたエアコンの仕組みとはまた少し違い、ヒーターは非常に単純な仕組みで作動をしています。


冷風を作り出すエアコンの場合は、人為的に繰り返し「氷」の代わりになる物を作り出すために様々な複雑な仕組みがありましたね。

しかしヒーターは意外と自然的に発生する熱を利用して温かい空気を作り出します。


エンジンが回転する際には、内部で爆発が繰り返されていてエンジン本体にかなりの熱を持つ事は皆さんご存知だと思います。
もちろん何の対策も施していなければ、エンジンの熱は上昇を続けてしまいます。
つまりオーバーヒートですね。

それを防ぐ為に冷却水(ラジエータ液)を循環させてラジエータで放熱し、サーモスタットでエンジンの熱を一定に保っているという事も多数の方がご存知だと思います。


何が言いたいのかというと、エンジンを使用している自動車である限りは

「熱に困らない」

という事です。要は意識的に作ろうとしなくても存在しているのです。


ではエンジンの熱をどのように活用して温風として室内に取り込むのでしょうか?


●エンジン本体に風を当てる?

●排気ガスを室内に取り込む?


まぁ後者は死んでしまいますので有り得ないですが、前者は少し近いですね。

先ほど少し出てきましたが、ヒーターは冷却水を活用します。

どのように活用するのかというと、前回登場したエバポレータと同じような形状をした「ヒータコア」という部品に冷却水を送り込み、そこにブロアモーターの風を通して室内に送り込みます。


エアコンの場合は氷に見立てたエバポレータを通して室内に冷風を送り込んでいましたが、ヒーターは80度ほどの熱の塊になったヒータコアを使用します。

ちなみに温風の温度調整は、送り込む冷却水の量を調整して行います。


さてここまでお話しした所で、冒頭に出てきた

「エンジン始動直後にヒーターを付けても冷たい風しか出てこない」

という事象の理由がお分かりいただけましたでしょうか???

つまり熱くなった冷却水を導く事でヒータコアは熱くなり、そこに風を通す事でようやく温風が出るというヒーターの仕組みを理解していれば、冷たい冷却水を通したヒータコアに風を通しても冷たい風しか出てこないのは当然ですね。

ここで一つ、違った視点からヒータコアを見てみましょう。

ヒータコアの見た目はエバポレータそっくりですが、エバポレータ自体はラジエータそっくりです。
つまり放熱性が非常に良い(表面積が非常に大きい)ですので、風を通すだけで温風に瞬時に変化するのです。

冷たい空気が温風に変化するという事は、冷却水が持っていた熱を空気へバトンタッチしている訳ですので、
必然的に冷却水自体の温度が下がることになります。
要はラジエータとほとんど同じ役割をしていると言っても過言ではありません。
両者の違いは、

「走行風やラジエータファンで冷却しているか、温風を作るために風を当てているか」

の違いとなります。
どちらにしても風を当てて温度を下げている事には変わりがありませんよね。


さてここで問題です。


冷機時にエンジンを始動し、車内がとても寒いので早く室内の温度を上げたいのですが

1.初めからヒーター全開にして、温かい空気を少しでも早く出すようにしておく。

2.エンジンが温まるまで我慢し、暖機終了後にヒーターを全開にする。



どちらが効率的に温風を出す事ができるのでしょうか?

ポイントは「ヒータコアに冷却水を通す=ラジエータを増やす」という部分です。




…。




う〜ん。




あまり考えてくれていないようですので、さっさと答えを言います(涙)


答えは2番ですね。


ヒーターを全開にしているという事は、まだ冷たい状態の冷却水をヒータコアに通してさらにブロアモータで風を当てる訳ですから

「冷却水の温度の上昇を意識的に妨げている」

という状態です。

エンジン保護の面でも、冷機状態が長く続くわけですから決して良いと言えません。
さらに冷たい風がガンガン室内に送り込まれますから、精神的にも良くありません…。

という事で、早く室内を温めたい時は

「ヒーターを切った状態で、アクセルを少しだけ踏んで回転数を上げた状態を維持して早く暖機を完了させ、その後にヒーターを「内気循環」で付ける」


別にアクセルを踏んで回転数を上げなくてもいいですが、早く温めたかったらエンジンの回転数を上げてやれば(冷機時は上げすぎ注意!)早く温度が上昇しますよ〜って事です。

内気循環にする理由は、取り急ぎ室内温を上げたい訳ですから冷たい外気を導入してしまうと本末転倒だからです。

もちろん走行中の暖機は少し危ないですのでお勧めしませんが、私は信号待ちなどでニュートラルにした状態で少し回転を上げて温度を上げたりしています。
運転前にしっかりと暖機をしていれば良いのですが、忙しい時などはなかなか出来ないのも現実ですので。


さてここまででヒーターの仕組みを理解していただけたと仮定して、余談を二つほど。

一つ目は意外と知られていない知っていると結構使える豆知識です。

それは、

「ヒーターを使用する際は、エンジンの動力を使用しない」

という事です。

当たり前でしょ?と言われれば悲しいのですが、エアコンの場合はエンジンの動力で作動するコンプレッサを使用するために、エンジン出力を奪われる事になって結果的に燃費が悪くなると言うデメリットがありましたよね。
エアコンの冷凍サイクル

しかしヒーターは違います。

もともとウォーターポンプによって循環している冷却水を、ヒータコアに寄り道させるという「水路切り替え」とブロアモーターを作動させる電力だけで温風が出ます。

細かい事を言えば、循環させる水路が長くなるのでウォーターポンプの負担が大きくなってエンジン出力の低下につながるとか、ブロアモーターを作動させるための電力を供給する為にオルタネータの負荷が大きくなってエンジン出力の低下につながるといった見解もできますが、コンプレッサを駆動させるエアコンに比べれば全然小さい影響です。

という事で、ヒーターはほとんど燃費に影響しませんので皆さん安心して使用しましょう。

一つだけ注意点を上げるとすれば、

「ヒーターを使用する時にA/Cスイッチ(コンプレッサ)をオフにする事」

が燃費に良いヒーターの使用方法です。

A/Cスイッチを入れなければ室内が曇りやすくなりますが、曇ってきたらA/Cをオンにして「外気導入」や「デフロスタ」を併用すれば一発です。

A/Cを使用する事で送り込まれる空気の湿気を取り除いてくれますので、非常に乾燥した空気になります。
さらに外気導入を行う事で、乾燥した空気が取り込まれますので素早く曇りが解消してきます。
「デフロスタ」というのは聞きなれない言葉かもしれませんが、エアコンの送風口切り替えにあるフロントガラスに風を送るやつです。
デフロスタ
デフロスタ(ダイヤル式)
私はこのマークが「ガスコンロ」みたいに見えてしまうのですが…。


今ふと思ったのですが、意外とエアコンに用意されている各スイッチ類の意味が分かっていない方っているんじゃないかと…。

そういう方の為に、「エアコンのスイッチを使いこなそう!」というページを作成しておきましたので活用してくださいね♪


話しが反れましたが、残り一つの余談を。

季節は変わり、主に夏場で使えるテクニックの一つです。

このページをご覧いただいている方の中にもオーバーヒートを経験した事がある方がいらっしゃると思いますが、オーバーヒートをしたり、しかけた場合の応急手当がヒーターでできるのです。

ヒーター=ラジエータという認識でいれば、ヒーターを使用する事でエンジンの温度を下げる一つの手段になる事が分かりますよね。
という事は、オーバーヒート(重度を除いて)の際にヒーターを全開にすれば一つの冷却手段として応用できるわけです。

結構有名な方法なのですが、夏場だと地獄絵図のような状態になりますので自身のオーバーヒートにご注意ください(笑)


長々とお話ししてしまいましたが、ヒーターはエンジンの温度と連動しているという事とラジエータ同様の働きをするという事を覚えておきましょうね!
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・第四回 激化する燃費戦争、発電だけではなくなったオルタネータの役割
・第五回 大解剖!スターターの仕組み 前編
・第六回 アイドルストップシステムの普及がもたらすスターターの革新 後編
・第七回 エンジン点火に必要な電圧は数万V! イグニッションコイルの役割
・第八回 さらばディストリビューター、点火タイミングは電子制御で最適化する時代に
・第九回 すごいぞスパークプラグ、2000℃に加熱してから急冷して高圧を掛けても壊れない
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